松永伸司

美的なダメ出しをすることになんの理由があるのか? 良いものを選別すればいいのであって、だめなものは放っておけばいいのではないか? 答えは単純だ。われわれは、肯定的な批評も否定的な批評も両方必要としている。成功から学べるものと同じくらい失敗から学べることはある。 対象がなんであれ、あらゆる批評の本質的な側面は評価だ。ちゃんとした批評は、評価を理由によって裏づけなければならない。記述は、ある創作物がどのようなものか、その諸部分がどのように互いに関連しあっているかを読者に伝えることだ。記述は、批評の他の側面の基礎になる。比較は、異なる創作物同士の類似と差異を指摘することだ。文脈化は、その作者が以前に作った作品、その着想源、より広い文化的状況といった枠組みのなかに当の作品を位置づけることだ。解釈は、この創作物の意味や重要性はなんなのかという問いに答えようとすることだ。これらの批評要素は、結局のところ評価の材料になるものだろう。それらは、理由づけられた評価のための土台を批評家に与えるものだ。